知識ゼロから行政書士を独学で合格|リアルな体験談と勉強方法

資格

わたしは、2017年から行政書士試験の独学を始め、2019年度の試験で合格しました。

今回は、法律知識ゼロの状態から、独学で行政書士試験に合格したときの体験や勉強方法についてお話します。
「行政書士試験に挑戦したい」「今ちょうど勉強している」という方にとって、この記事が少しでも役に立てば幸いです。

行政書士試験を受験したきっかけ

正直なところ、「行政書士」という資格にこだわりはありませんでした。

当時のわたしは高専という工業系の学校を卒業してから、メーカーで技術職に就いていました。
大手企業でしたが、「このままこの職場で働き続けるかな」「自分は何の能力もスキルも無い」という漠然とした不安と劣等感を感じていました。

そんな時、元ヤンキーでフリーターの男性が独学で行政書士に合格、事務所を開業したという内容のコラムを読みました。
「フリーターから経営者って夢あるなぁ」と思い、本屋で平積みされた行政書士のテキストをなんとなく手に取り購入しました。

行政書士試験の教科は、基礎法学、憲法、民法、行政法、商法・会社法、一般知識、個人情報保護、文章理解。
300点満点の180点(6割)以上で合格。二次試験なし。受験資格なし、誰でも挑戦できる試験でした。

テキストをざっとめくってみて、「あれ、これならいけるかも?」と感じました。法律の知識なんて一切なかった私ですが、「一発試験で6割とれればOK」というシンプルさに惹かれ、行政書士試験への挑戦を決意しました。

受験を決意してから

行政書士試験の受験を決意してから、思い切って環境をガラリと変えました。

法律事務所へ転職

まずは、勤めていた会社を辞めて法律事務所の事務職へ転職しました。

日常的に法律用語に触れること、法律家の方の近くで働いてモチベーションを高めることが目的でした。今思い返せば短絡的な判断だったかもしれませんが、当時は「とにかく法律に近い環境に身を置きたい」と考えていました。

もう1つの理由は勉強時間の確保です。当時の職場は毎日のように残業があり、休日出勤がありました。これではまとまった勉強時間の確保が難しいと考え、「残業がなく、土日祝日が休み」の条件で転職先を選びました。

自習室を契約

「家で1人勉強し続けるのは難しい」と思い、毎月8,000円ぐらいで利用できる自習室を契約しました。

パーテーションで仕切られた半個室の個室の空間は、集中して勉強するのに最適でした。また、他の利用者も資格試験の勉強や仕事に取り組んでおり、モチベーションを維持できました。

平日の夜と、休日のほとんどは自習室で勉強していました。

勉強専用のツイッターアカウントを作成

ツイッター(現在のX)で行政書士の勉強専用アカウントを作りました。

士業の先生や資格試験の勉強に取り組んでいる方が多く利用しており、自身のモチベーション維持に役立つと思いました。

勉強中に感じたことや疑問、日々の進捗などを投稿しているうちに、フォロワーさんとの交流も増えていきました。そこから勉強のアドバイスをいただいたり、試験に関する情報交換ができたりと、SNSのつながりが励みになりました。

テレビを手放した

試験勉強を始めたことを機に、思い切って部屋にあったテレビを手放しました。

元々かなりのテレビっ子だったので、勉強に集中するにあたっては何よりの誘惑になると思いました。

そのままテレビを見る習慣がなくなり、現在もテレビを持たなくなりました。

独学で進めた勉強方法

行政書士試験の専門学校なども検討しましたが、受講料が高額だったので独学することに決めました。

ここからは、実際にわたしが取り組んだ勉強方法を紹介します。

「テキストを読む⇒基礎問題を解く」の繰り返し

まずは、テキストを読み込み、ある程度理解できたら基礎問題を解くことを繰り返しました。

最初から完璧に理解しようとせず、「ある程度は理解できた」と思ったら、すぐに基礎問題に取りかかることがポイントです。ただテキストを読むだけのインプット学習では、記憶に残りづらく理解が深まりません。
基礎問題を解いて、解説を読んで「なぜそうなるのか」を考えたり、もう一度テキストを確認したりすることで、徐々に知識が定着していきました。

この繰り返しによって、法律用語や条文、判例独特の言い回しにも慣れることができました。

10年分の過去問演習

各教科ごとに、「テキストを読む⇒基礎問題を解く」を繰り返し、基礎問題をしっかり解けるようになったタイミングで、10年分の過去問演習に取りかかりました。

しかし過去問演習は、基礎問題と比べてかなり難易度が上がります。特に、民法(債権法)は1問に1時間以上かかることもありました。

正直心が折れそうになることもありましたが、「過去問を解く⇒解説を読む⇒理解する⇒もう一度解く」をひたすら繰り返すうちに、問題の出題傾向やパターンに慣れていきました。

全て解き終わるまでには時間がかかりましたが、その分理解が深まり、「10年分の過去問をやった」という自信を得ることができました。

択一式問題の選択肢に理由付け

行政書士試験は、主に5つの選択肢から正答を選ぶ「択一式問題」が中心です。

択一式の演習問題をするときは、ただ正解を選ぶだけで終わらず、「なぜこの選択肢が間違っているのか?」を必ず考えるようにしていました。そして、その理由をノートに書き出して、自分で説明できるかを確認していました。

理由を上手く説明できない場合は、解説やテキストで確認しました。これは、繰り返し演習問題を解いているうちに「回答を覚えてしまっている」ことを避けるためでした。

選ばなかった選択肢にも理由付けをすることで、「なぜ正解か?」だけでなく「なぜ不正解か?」まで含めて知識を定着させることができました。

記述式対策用の問題集

行政書士試験では、記述式の問題が3問出題されます。記述式問題は配点が高いため、絶対に落とせないと思っていました。

テキストの演習問題や過去問だけでは不安になり、記述式対策用の問題集を1冊購入し、繰り返し解きました。

記述式に求められるのは、民法と行政法の知識だけでなく、それらを指定文字数内で的確に記載ことです。いくら内容を理解していても、必要なキーワードを含めつつ指定文字数内でまとめられなければ得点につながりません。

記述式に特化した問題集を解いたことで、知識を言語化してまとめることができるようになりました。

公務員試験用の長文読解の問題集

行政書士試験では、一般知識の科目で長文読解が出題されます。

テキストや演習問題では対策できないため、公務員試験用の問題集を1冊購入しました。

長文読解には、文章の読み方や解き方にコツがあることが分かりました。そのコツを掴むまでに時間がかかりましたが、繰り返し問題に取り組むことで少しずつ慣れていきました。

しっかり対策したことで、試験本番でも落ち着いて解くことができました。

読み上げた条文を録音して隙間時間に聴く

憲法の全条文と民法、行政法の重要と思われる条文を自分で読み上げ、iPhoneに録音しました。それを通勤時間や移動時間に繰り返し聴いて条文を暗記しました。

特に憲法に関しては、条文の穴埋め問題などを出題されることがあるため、正確に覚える必要がありました。民法や行政法も、重要な条文を押さえたことで、問題の理解や選択肢の判断をスムーズに行えるようになりました。

本番に近い環境で模擬試験を受ける

本試験日が近くなると、各地で模擬試験が実施されます。

わたしは試験慣れをするためにも、できるだけ本番に違い環境で練習したいと思い、模擬試験を合計5回、会場を受験しました。

会場での模擬試験は、試験官の方がきっちり時間を管理するため、時間配分や本試験独特の緊張感を体感できます。自宅でも模擬試験は受けられますが、会場で受けたことで本番当日を具体的にイメージできました。

勉強時間について

行政書士に合格するために必要な勉強時間の目安は、一般的に約600~1000時間と言われています。もちろん、個人の能力や前提知識などによって差があるのだと思います。

わたしの場合、平日は4~5時間、休日は8~10時間ほど勉強していました。平日の仕事終わりも休日もほとんど自習室にこもって勉強漬けの毎日を過ごしていました。それに加えて、朝家を出るまでの時間や、通勤時間やお昼休みなどの隙間時間も活用しました。

わたしは知識ゼロの完全初心者だったので、これぐらいの勉強時間が必要だったと感じています。

行政書士試験に合格するコツ

ここまで実践した体験記や具体的な勉強方法を紹介してきました。

ここからは、それらの体験を踏まえて感じた「行政書士試験に合格するためのコツ」を紹介します。これから行政書士試験を目指す方の参考になれば嬉しいです。

「捨て問」はすぐに切り捨てる

行政書士試験には、難易度が極端に高く、普通の受験生では解けない「捨て問」が出題されることがあります。

こうした問題に時間をかけるのは非常に非効率です。過去問演習を解いていると、「これ捨て問っぽいな」となんとなく判断できるようになります。そう感じたら、深追いせずすぐに切り捨てるのがポイントです。

一方で、配点の高い記述問題や法律の知識がなくても解ける文章理解などは、確実に得点をとるべきです。限られた時間を有効的に使うためにも、捨てるべき問と取るべき問を見極めることが大切です。

解く順番や時間配分など自分なりのルールを決める

自分の中で、「どの順番で解くか」「どの教科にどれぐらい時間をかけるか」などのルールを決めておくことも重要です。

わたしの場合は、行政法→民法→記述式→基礎法学→憲法→情報通信・個人情報保護法→文章理解→会社法→一般知識(政治・経済・社会)の順番と決めていました。自信のあった行政法と民法、そして配点の高い記述式問題を先に解いた後、比較的得点しやすい基礎法学、憲法、個人情報保護法、文章理解に進みました。そして、苦手だった会社法と一般知識(政治・経済・社会)は最後に回し、「時間が無ければ勘で回答しよう」と割り切っていました。

もちろん得意・不得意は人それぞれなので、出題順どおり解いても全く問題ないと思います。解く順番を変える場合は、マークシートずれに注意が必要です。

自分にとってベストな順番や時間配分を、本番前の模擬試験で試しておくと安氏です。

一般知識(政治・経済・社会)の学習に時間をかけない

行政書士試験は、「政治・経済・社会」に関する時事問題が出題されますが、この分野は範囲が非常に広く、その年によって出題傾向が変わるため対策が難しいです。

それよりも、限られた時間の中では、得点しやすい主要科目に時間をかけることが効果的だと感じました。

わたしの場合、「政治・経済・社会」の対策は、過去問演習をひと通り解き、それに加えて、ニュースや時事ネタに目を通すよう意識して、必要最低限の情報を押さえるにとどめました。

行政書士試験の独学は可能

行政書士試験は、ポイントをしっかり押さえて勉強を継続できれば、独学でも合格を目指せる試験だと思います。

実際にわたしも独学で挑戦しましたが、かなりの勉強時間を要しましたし、一度目の試験では不合格という結果に終わりました。今振り返ると、専門学校などで指導を受けていれば、もっと効率的に学習を進められたのではないかとも感じています。

独学にもメリットはありますが、もし勉強を進める中で「独学は厳しい」と感じたら、無理せず学習サポートを活用するのも一つの手段です。大切なのは、自分に合った学習スタイルを見つけることだと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました