こんにちは。さきです。
今回は、親が亡くなったときの借金の相続についてお話します。
「親が死亡してから借金が発覚した」というケースは少なくありません。
また、現在親が借金を抱えていて「親が死んだら子供である自分がその借金を負担しなければならないの?」などと、不安を感じる方もいるのでは。
この記事では、親が亡くなった後の借金を相続しない方法や、具体的な手続きを紹介します!
ぜひ参考にしてください。
【結論】原則、親の借金は相続人が引き継ぐ
原則、親が死亡した後の借金は相続人が引き継ぎます。
相続は、親の預金や不動産などのプラス財産だけでなく、借金などのマイナス財産も相続します。
法律上、亡くなった人に配偶者と子供がいた場合、財産は法定相続人である配偶者と子供が受け継ぎます。
例えば、借金を残して父親が亡くなった場合は、その妻と子供が借金の支払い義務を負うのです。
親の借金を相続しない方法
親が亡くなった場合、相続人の選択肢として、単純承認・相続放棄・限定承認があります。
単純承認を選択すると、亡くなった人のプラス財産もマイナス財産も全て受け継ぎます。
そのため、親の借金を相続しないためには、相続放棄または限定承認を選択する必要があるのです。
ここからは、相続放棄と限定承認について詳しく解説します。
相続放棄をする
相続放棄とは、相続人としての地位を放棄することで、プラス財産もマイナス財産も一切相続しないことになります。
相続放棄の手続きをすることで、親の借金を受け継がずに済みます。
相続対象になる借金として、ローンやカードの借入、滞納家賃、滞納税、損害賠償債務などがあります。これらを全て受け継ぐとなると、相続人の負担は非常に大きいでしょう。
借金などのマイナス財産が多い場合は、相続放棄を検討することをオススメします。
また、相続が発生すると、多くの場合は相続人間で遺産分割協議を行います。
その際に、なかなか意見がまとまらず相続人間で揉め、トラブルに発展することがあります。
このような揉め事を回避できるのも相続放棄のメリットです。
★相続放棄の注意点★
相続放棄すると、同時にプラス財産を手放ししまうこととになります。
仮に資産の方が多い場合であっても、相続する権利を失ってしまうので注意しましょう。
また、相続放棄をするとその後の撤回ができません。
仮に、相続放棄した後に高額な財産が見つかった、という場合であってもやり直せません。相続放棄をする際は、事前によく財産を調査した上で検討しましょう。
限定承認をする
限定承認とは、亡くなった人のプラス財産の範囲内でマイナス財産を相続することです。
もし相続した資産より借金の方が多く、全体的にマイナスであっても、相続人はプラス財産以上の借金を負う必要がありません。
例えば、亡くなった親に500万円の借金と300万円の預貯金があり、相続人が子供1人だったとします。
限定承認を行うことで、子供は100万円の限度でマイナス財産を負うことになるため、残りの200万円は負担せずに済むのです。
相続した借金より資産の方が多い場合は、プラス財産分を相続人が取得できるメリットがあります。
また、限定承認の場合は、先買権が利用できます。
先買権とは、相続財産が全体的にマイナスでも、相続人が「どうしても受け継ぎたい財産がある」という場合、相当金額を支払うことでこれらの財産を取得できる権利です。
例えば、「どうしても家だけは相続したい」などの思いがある場合は、限定承認を検討するとよいでしょう。
★限定承認の注意点★
仮に相続人の1人が死んだ親の預貯金口座を解約するなど遺産の処分行為を行うと、単純承認とみなされて、限定承認ができなくなるので注意が必要です。
また、限定承認は相続人全員で共同で行う必要があります。
相続人全員に限定承認したいことを説明して同意を得なければなりません。1人でも反対する相続人がいると、スムーズに手続きが進まないことがあります。
また、限定承認の手続きには手間と時間がかかります。
家庭裁判所への提出書類が多く、手続きも非常に複雑です。
プラス財産が残らないと、手間と時間だけがかかってしまう可能性があるので、初めの相続財産の調査は慎重に行う必要があります。
相続放棄の流れ
ここからは、相続放棄の手続きの進め方を解説します。
相続放棄は、他の相続人と共同で行う必要はなく、相続人単独で手続きを行えます。
①相続財産を調査する
まずは、亡くなった人の財産を調査し、相続放棄すべきか否かをよく検討します。
②必要書類を準備する
相続放棄に必要な書類は、相続放棄申述書(放棄する理由や相続財産の概略など必要事項を記入)、亡くなった人の戸籍謄本、亡くなった人の住民票または戸籍に附票、相続放棄する人の戸籍謄本です。
③家庭裁判所に必要書類を提出する
亡くなった人が生前最後に住んでいた居住地の家庭裁判所に、準備した必要書類を提出します。
④照会書に回答する
家庭裁判所に書類を提出してから、数週間~1カ月後に照会書が届きます。
死亡を知った経緯や相続放棄が自分の意思なのかなどを確認する書類です。
回答を記入し、返送しましょう。
⑤相続放棄申述受理通知書が届く
相続放棄申述書が受理されると、数週間から1カ月後に裁判所から相続放棄申述受理通知書が届きます。
限定承認の流れ
ここからは、限定承認の手続きの進め方を解説します。
限定承認の手続きは少々複雑です。それでは見ていきましょう。
①相続財産と法定相続人を調査する
まずは、亡くなった人の財産を調査し、本当に相続放棄すべきかをよく検討します。
また、限定承認は相続人全員で行う必要があるので、法定相続人が誰なのかを調査します。
②相続人全員に相談する
次に、相続人全員に限定承認したいことを説明し、同意してもらう必要があります。
相続人の1人でも単純承認とみなされる行為(口座の解約など)をすると限定承認の手続きをとれなくなるので、なるべく早めに説明した方がよいでしょう。
③必要書類を準備する
限定承認には、限定承認の申述書、財産目録、死んだ親の出生から死亡までの戸籍、死んだ親の住民票または戸籍の附票、法定相続人全員の戸籍などが必要です。
状況によって必要書類が異なるケースがあるので、事前によく確認しておきましょう。
④家庭裁判所に申述する
必要書類が揃ったら、亡くなった人が生前最後に住んでいた居住地の家庭裁判所に書類を提出し、相続人全員で限定承認の申述を行います。
⑤照会書に回答する
家庭裁判所に申述してから、数週間~1カ月後に照会書が届くので回答して返送します。
このときに追加書類の提出などを求められることがあります。
限定承認の申述が受理されると、裁判所から受理通知書が届きます。
⑥相続財産管理人を選任する
限定承認の申述が受理されたら、次に相続財産の清算手続きが行われます。
相続人が複数人いる場合は相続財産管理人を選任し、1人の場合はその人が相続財産管理人となります。
⑦官報公告
限定承認の申述が受理されたら、亡くなった親の債権者への周知が必要です。
限定承認したことを官報公告(政府が発行する機関紙)に掲載し、必要に応じて債権者が債権を請求するよう知らせます。
事前に債務があることが分かっている債権者に対しては、官報公告だけでなく、限定承認したことと債権を請求することの個別通知が必要です。
⑧債権者に弁済する
官報公告をしたら、相続財産の預貯金は解約され、不動産や有価証券などはすべて換価されます。
基本的にすべてのプラス財産は現金化され、債権者に弁済されます。
相続財産の中にどうしても手放したくないものがある場合は、先買権を利用することで優先的に買い取ることが認められます。
⑨残余財産を取得する
債権者に返済して余った財産は、相続人が取得できます。
法定相続の割合で分配するか、相続人間で遺産分割協議を行います。
相続放棄・限定承認の注意点
相続放棄や限定承認には注意点があります。
期限内に手続きを行うこと
相続放棄と限定承認の手続きは、相続の開始があったことを知った日から3カ月以内に行う必要があります。
特に限定承認は、手間と時間がかかるため、相続が開始したらなるべく早く着手することをおすすめします。
どうしても期限を過ぎてしまいうときは、裁判所に期限伸長の申立てを行うことで、3カ月を過ぎても限定承認ができる場合があります。
3カ月を過ぎて何もしてないと単純承認したとみなされるので十分に注意しましょう。
相続財産の処分行為を行わないこと
相続財産の処分を行うと、相続の意思があるとみなされて相続放棄や限定承認ができなくなります。
例えば、死んだ親の預貯金の引き出しや口座の解約、実家の売却などの行為が挙げられます。
特に限定承認では、相続人の1人でも処分行為を行ってしまうと手続きがとれなくなってしまうので十分に注意しましょう。
まとめ
相続放棄と限定承認にはそれぞれメリットとデメリットがあります。
状況によってどの方法が最適かをよく検討する必要があります。
手続きが複雑であったり、専門的な知識が必要なこともあるので、不安な場合は弁護士や司法書士、行政書士などに依頼することをおすすめします。
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